ここ10年間、地方分権については議論がなされてきたが、行政面での裁量の範囲 に関する議論が中心で、財政的な側面にはほとんど手つかずだった。つまり、自治体 が税制面で何処まで裁量の余地を持つのか、自主的な課税権を得るのか、一方で歳出 面で財政的にどのていど自由がうるされるのか、といった点で進展がなかった。行政 的な裁量の余地の移譲に関しては、多くの自治体間で利害が一致するのに対し、財政 面では自治体間で利害が対立するので分権の議論が進展しない、というのが現状だ。
財政面での分権のメリットは、住民が自分の自治体が他の自治体と比較して、税負 担に応じた行政サービスを提供しているかどうかモニター出来るので、自治体にプ レッシャーが働き、効率的な地方自治の運営を目指すようになることだ。
一方、デメリットは、税率の引き下げ競争が起こる可能性があるということだ。即 ち、住民税とか法人事業税を下げて、他の自治体から住民や企業を誘致する働きかけ ることだ。当然、これを阻止すべく他の自治体も税率を下げてくる。これを繰り返す ことにより、消耗戦となり、共倒れも生じかねない。もう一つは、自治体が意志決定 する際、他の地域に与えるスピルオーバー効果に配慮しなかったり、逆に、公害をま き散らすなど他の地域に及ぼす迷惑を考えないことだ。さらに、各自治体が行財政面 で独自の意志決定をするには、公務員数の増加、そのための設備の拡充、など固定費 用が嵩むのは避けられない。それから、経済的な地域間格差を是正するための再配分 には、住民はどうしても消極的になり、トータルでのプラスサムのゲームは望めなく なる。
国税収入が逼迫している現状で交付税をスリム化しなければならないわけだが、行 政サービスの便益に応じて負担する住民税を増やすのが現実的だ。それから、行政 サービスの対価が表面化し易い固定資産税の増税。加えて、受益と負担のリンクの点 で論理的な消費税の増税。もう一つは、基準財政需要の徐々の削減により、最終的に 交付税を無くしてしまう、と言う案。これは、私が日経の経済教室でも提言したもの だ。こうして交付税をなくして得た財源で、国は財政赤字の削減や国税の減税を可 能ならしめることが出来る。
平成14年7月10日
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